展示/EXHIBITION
幻 展
茅スタジオでは、昨年につづき「幻展」シリーズの2回目となる、写真家・中村紋子の新作展示を開催いたします。
かつて中村は、自身のもつ感覚ー幻感ーに大きく戸惑いながらも、作品をつくりつづけていました。2011年から18年にかけて発表された三部作の写真展「Silence」「Birth」「Daylight」を通じて、幻感からは逃れることもコントロールすることもできないという境地に至ります。
より引いた視点から、2023年の展示「ノート」(Roll)では、自身の創作活動を「記録であり、日記のようなもの」と位置づけます。作品にテーマ性や文脈があるのではなく、ただ目の前にある有り様を撮っているだけ。同時に、その日記的な制作姿勢は、日本文化のひとつである「日記文学」とも通じていることに気づきます。
そして翌2024年より、幻感と正面から向き合うため、幻感そのものに焦点を当てた展示「幻展」(茅スタジオ)シリーズをスタートします。
幻はわたしだけのものなのか?
内省から始まったこの旅は、「私」を越えた他者へとつながっていきます。
写真や映像など、多層的な表現を織りまぜ構成される本展は、幼少期よりつづく中村の世界の見え方をたちあげる実験的な展示であり、次作品「無明」へとつながる現地点です。
幻のような、5日間限定の夜をどうぞお楽しみください。
日時
2025年9月19日(金) — 23日(火祝)
OPEN HOURS |17:30 - 20:30
ENTRANCE FEE |500yen
場所
茅スタジオ
*駐車場が1台ございます。車でご来廊される方は日時を添えてhello@ucou.jpまでご予約ください。
なお、満車の際は近隣の駐車場(徒歩8分程度)をご利用いただきますようお願いいたします。
2020年に中村紋子が仲間と共につくった場。
「つくる」に向かえる場をつくるため、マンションの一室を大きく改装してできた茅スタジオは、自分たちの「つくる」のための場であり、ここを訪れる人みんなの「つくる」のための場となっている。
本展は中村自身が日常的に「つくる」ための場としてつかう茅スタジオを展示会場としたアトリエ展である。
作家
中村紋子 | Ayaco Nakamura
Photographer/illustrator
1979年、埼玉県生まれ。幼い頃から絵を描くのが好きだった。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院写真領域修了。在籍中に写真と絵をミックスした私家版『週刊あやこ』を100号刊行。卒業後はイラストレーションシリーズ「USALYMAN」をロンドンのSaatchi&Saatchiにて発表。また国内ではB GALLERY等で個展を開催。雑誌等で仕事をしつつ、2011年〜18年にかけて、三部作の写真集『Silence』『Birth』『Daylight』を刊行。現在はポートレートや舞台撮影、障がいがある人たちとの「つくる」を通したプロジェクトディレクション等、さまざまな表現活動に携わる。2020年に仲間と共に茅スタジオをつくる。
Ayaco Nakamura was born in Saitama prefecture, Japan, in 1979. She has been recognized for her photography and illustration pieces since her early twenties. Her illustration series “USALYMAN" was exhibited at Saatchi Saatchi Gallery in London and solo photo exhibitions in Japan at B Gallery and other venues while working for people who asked her to take personal photography or stage photography. She published a trilogy of photography books, "Silence," "Birth," and "Daylight," from 2011 to 2018. She has been involved in a variety of expressive activities, including project direction with people who have disabilities.
Ayaco Nakamura, these days is often found working in Bou studio, along with other creatives, which was opened in 2020. She uses this studio as a base for her activities and she is re-confirming the appreciation for the beauty of daily life through interactions with the various people she meets there.
Related Exhibitions
Exhibition “Note”, Gallery Roll, 2023
2023.11.10—12.2
「ノート」展
Roll
内面へと向かう自問自答のようなものづくりを経て、おおきな意味での他者とのつながりが意識されていく転機となったのが「ノート」展です。小窓から差し込む光の変化を感じる展示室は、森を撮影した作品が中央に据えられた展示内容とも呼応しています。
低い位置に並んで置かれた作品を覗き込むように鑑賞し、ぐるりと回って最初の位置に戻る。まるで円の中にいるような、でも最初にいた位置とは少しずれているような感覚は、作家のもつ感覚ともリンクします。
その目で見えた感覚を日記のようにただ記し続ける。それが一連の作品制作における中村の態度です。日記を記すという行為は極めて個人的な行為ですが、一方で、それを作品にまで昇華し、他の文学作品同等に扱う視点は他国に類を見ない日本独特な文化であると看破したのはドナルド・キーンの『百代の過客』でした。
この視点を得て、作品制作を日記的に行うということは極めて個でありつつも、同時に、日本的・東洋的な価値観を大きく孕むものなのかもしれないという可能性にひらかれていきます。
「ノート」展は、強烈にあり続ける幻感に真正面から向き合いつづけた半生から、より俯瞰した視点へと踏み出すこととなります。
2024.10.26—28
幻展 #1
茅スタジオ
翌2024年、「ノート」展での予感に導かれるかのようにスタートしたのが「幻」展シリーズです。
幻展は、中村が日頃アトリエとして用いている茅(ぼう)スタジオという場で行うアトリエ展で、円環の中から抜け出せない「無明(むみょう)」の存在としての自己を認めつつも、それでも歩を進めていこうと、強烈に持ち続ける「幻感」自体に焦点を当てた実験的な展示を展開しています。
自分がいまここにいるというのが虚妄で、ほんとうはいないのではないかという、確信に似た感覚。それを絶えず持ちつつもそこから距離をとり、見え方をただ静かに描く幻展は、しかし、鑑賞者の不安を煽ることはなく、自然も虫も人間もすべてが同等であり、なにか目に見えない大きなものに包まれているような予感を抱かせていました。
Exhibition “Note”, Gallery Roll, 2023
Exhibition “Maboroshi”, Bou Studio, 2024
Exhibition Maboroshi
Artist: Ayaco Nakamura
© Ayaco Nakamura, all works